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キーパーソン [思うこと]

むかし。
栄町は言問ビルの4階に、
「Bell's」というライブバーがあった。
上京して2年目の夏、
お盆&阿波踊りで帰省するにあたり、
二十歳の記念にライブをやろうということになり、
高校時代のバンド仲間と企画した。
あの頃、
放課後になれば毎日のようにココスタに集まっては
飽きもせず音楽談義に花を咲かせていた高校生たちも、
その時はすでに大阪や東京にバラバラになっていて、
遠距離での計画や練習に不安なまま本番を迎えたことを
記憶している。

広い店内、ステージにはグランドピアノとドラム。
入り口のすぐ前にあるカウンター
タバコの煙に目を細めながら「いらっしゃい。」
オーナーであるみっちゃんは、私とは別世界の人のような、
大人の女の雰囲気をまとっていた。
話せば気さくで、
さっぱりしたお姉さんだということはすぐに分かったけれど、
どこか艶っぽい雰囲気に、会うたびにドキリとさせられた。
当然、大人が出入りするライブバー。
二十歳やそこらの私たちでは、
演奏能力も集客力も不安で仕方なかったけれど、
みっちゃんは終始カウンターの奥で静かに見守ってくれていた。
心の中ではきっと、
「ガキにはまだ早いじょ」と思っていたかもしれない。
(私ならそう思う)


おととい。
雪が舞う寒い朝。
彼女の告別式に行ってきた。
前日には虹が出たらしい。
「みっちゃん、どっちも見たかったんかなぁ・・・」
姉であるヨーコちゃんの投稿。
肩を落として小さく佇むヨーコちゃんが涙で歪む。
残された子供たちはまだ10代。
私は親になったことがないので、
ついつい子ども目線で物事を捉える癖があるけれど、
でも、彼らは、強くたくましく見えた。
参列者に深々とおじきをして、遺影を抱いてまっすぐ歩いていた。
葬儀が終わり外に出ると、また雪。
クラクションを鳴らし走り出す車に、
誰かが「ありがとう!」と叫んでまた景色が歪んだ。

高校を卒業して、上京して、
一人暮らしをして、デビューして働いて恋をして、
たくさんの人と出会ってきた。
そのすべてをちゃんと覚えてはいないけれど、
こうして音楽で生きる力を身につけられたのは、
いくつかの自分の居場所と、憧れる場所、
そこに導いてくれたキーパーソンのお陰だと思う。

去年の秋の夜、
ヨーコちゃんお手製のお寿司をもらいにいった時、
車椅子でお店のテレビを観ていたみっちゃん。
「今日は調子がいいんよ。」
艶っぽい、大人の女の笑顔が最後の記憶です。
ありがとう、みっちゃん。

Bell's.jpg


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